第24回日本術中画像情報学会 会長
菊田健一郎
福井大学 医学系部門
脳神経外科学分野 教授
このたびは第24回日本術中画像情報学会を主催する機会を頂き、福井大学同門にとりましてはこの上ない光栄であり、皆様に心より感謝申し上げます。開催にあたり一言ご挨拶申し上げます。
本学会では術中の画像支援技術をテーマとし、術中MRI、術中CT、術中DSA、超音波、蛍光診断、術前シミュレーション、術中ナビゲーションなどのデジタル技術をいかに脳神経外科手術に応用していくかについて検討し、発展させる場として進んでまいりました。年々進化する各種モダリティーを種々の工夫を凝らして各種疾患に適応してきたご経験を、我が国の第一人者の先生方から発表いただき、知識を共有できることは、参加者にとって大変勉強になり、また研究心を鼓舞されてきたと存じます。
結果として、術中画像技術に関する脳神経外科論文の多くが海外ではなく、本邦の研究者によって発表されています。その意味で我が国は、脳神経外科術中画像技術のメッカであるとともに、術中画像は日本の脳神経外科の臨床研究にとってメインフィールドと言えるると存じます。これほど画像診断及びそのデジタル情報を駆使して手術を行うのは、唯一日本が初めてではないかと思います。
さらに、本学会は脳神経外科医のみならず、各種モダリティーを開発、推進されておられる企業の研究者から、Work in progress段階の技術、未来の技術などもご紹介いただき、未来の術中画像情報の尻尾もも垣間見ることができます。
今回は学会テーマを「術中画像の必要性と十分性」といたしました。日本ほど画像診断をを駆使して手術を行う国はないと先述しましたが、逆に検査のやりすぎを揶揄されることもあります。日本においても、大きな施設では種々の術中画像情報を自由に用いることができますが、しかし小さな施設ではそうではありません。ある種のグリオーマではどうしても術中MRIがなければ安全確実な手術ができないが、そうでないものもあると思います。術中画像について必要性と、十分性を考える会にしたいと存じます。
例えば、私は「術中DSAを使用すれば、AVMが安全に摘出できる」命題も、その逆である「AVMが安全に摘出されるならば術中DSAを使用している」と言う命題が真であると考えています。つまり「術中DSA」は「安全な摘出」にとって必要十分条件と考えていますが、Onyx塞栓が進歩した現在は場合によっては必要ないるかも知れません。
同時期に頭蓋底外科学会が開催されるようですが、髄外病変はそちらに任せ、本会では術中画像を用いた、より困難な髄内腫瘍、AVMや海綿状血管腫など髄内血管性病変について大いに議論していければ嬉しく存じます。
最後に本学会を粘り強く推進し育ててこられました端和夫先生、水野正明理事長、これまでの本学会会長に深く感謝申し上げ、会長挨拶とさせていただきます。
令和5年11月19日 菊田健一郎